「ココが変だよね、日本の林業」モリコンvol.04イベントレポート

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「ココが変だよね、日本の林業」

その一言から始まった今回のモリコンは、打ち合わせの段階で相当、頭を悩ませた。だってそうだろう?

下手したら、いや、どんなにうまくやっても、いまの業界に荒波を立てるような未来しか想像できない。トークショーのゲストである松山さんも、不安に違いない。一歩、間違えれば、けんかを売るような事態になってしまうからだ。

ただ、結果としてそんな心配はいらなかった。ちゃんと前を向けるための答えがだせたのだから

トークショーの始まりは、松山さんの仕事の様子からはじまった。今日、松山さんは国有林の倒木処理してきた。倒木処理は採算性を度外視してでも実行されるため、ヘリ集材で行われた。ただ、そのまま放置しておくと、市民に被害がでるおそれがあるため緊急性は高い。

そして、倒木は近年、毎年発生する台風によって被害が拡大しており、“終わりのない仕事”が続いている。

で、倒木を実際にどうやって処理するのかが気になる。

――倒木処理にもっとも求められるのは何か?

松山

センスだ。

――どんなセンスなのか?

松山 

力を見極めるセンスが必要になる。倒木は一本だけ倒れているケースはまずない。倒れているときは、複数の丸太がパズルを無作為に倒したみたいに重なっている。そして、丸太同士がお互いに力をかけあって、倒れている。間違えた順番で木を伐れば、丸太が跳ね上がることもあるので危険だ。力の見極めは、わかる人は新人でもすぐにわかるが、わからない人はずっとわからないことが多い。

まず、前提として力がかかっていない木から処理する。ちょうどパズルを解くみたいに、上からほどいていくようなイメージだ。そして、最後の丸太までていねいに伐っていく。

――まるで高校の時に習った、物理で出てくる力のモーメントみたいだ。

松山

そうだ。だが決して物理ができるからといって、倒木処理ができるわけではない。そもそも力のモーメントは、モデルだからできるのだ。実際に現場では、木の裏は見えないところが多い。木の裏を想像する力が必要だ。その目があるかないかが重要になる。

――実際の伐り方は教科書通りに進むのか?

松山

そんなことないのは、成田君も知っているだろう。退避経路の関係上、持ち手を左右逆にすることがある。受け口のつくり方は、V字カット、台形型の受け口をつくることがある。特にわたし気に入っているのは、V字カットの受け口だ。

――V字カットの受け口とはどんなものか?

2015/ 4/ 9 16:09

松山

写真のような伐り口になる。ツルを強くする意図と、ねじれながら丸太が倒れる。そうすることで、この後の倒木処理を楽にすることを意識して作業する。どんな仕事でもいえるが、あとのことを考えて作業すると安全かつ効率的に作業を進めることができる。

――なるほど。少しテクニカルな話になってきた。もう少しレイヤーを上げた話にしよう。標準伐期についてどう思うか? 標準伐期はわれわれがうまれたときはだいたい、35~40年ぐらいだったと記憶しているが、今は50年生を超えてきている。用途も変わってきているからかもしれないが、それにしても場当たり的な考えのように思える。

松山

そもそも、われわれは伐採や枝打ちの発注に基づいて作業する。そのときに、作業の意図が説明されないことがほとんどだ。

――どういうことか?

松山

山主がなにも考えていないといわないが、明確な理念や方法論をもって作業を発注する者はほとんどいない。そして、事業者も明確な方針論がなければ、補助金を思考停止にただ作業をこなすだけになっている。

補助金の要綱の中には間伐の割合が3割と規定されている。ただ、その3割が樹冠面積なのか、本数なのかによってまた違う。そもそも対象林地が3割伐るのが正しいかもわからない。細い材が密集しているのであれば、4割、5割の本数を伐採するのが妥当なのかもしれない。樹冠面積のうち3割伐ったとしても、伐りすぎなこともある。また、せっかく事業体が頭を使って施業したとしても、行政の監査を受け3割の本数を伐ることを指導するケースもある。結果、冬を越せない山があるなど残念なケースもあった。我々にとって良い監査とは、山のことを思って一部2割間伐をしている部分をあるのを承知して、3割のプロットを見せて監査を通してくれるような人だ。

また、山林の環境だけを重視していれば、問題ないかというとそうではない。民間企業である以上、利益も重視していればならない。私たちはお金がなければ生活できないのだから。ただ、それでどうしようもならない山をつくるわけにはいかない。経済と環境の両立が重要だ。

――なるほど、当たり前だが実現するのは難しい問題だ。コメント欄に質問がきている。山林に無関心な山主の意識改革はどのように進めていくとよいか。

松山

わたしが前いた事業者は、山主に直接雇用されていたため、実をいうと請負仕事はあまり経験がない。ただ、周りの話を聞いていると、やはり金銭的に儲けることができれば、意識はかわるだろう。それがたとえ少額であったとしても、山主に還すことで山林に興味を寄せてもらうしかない。地道に継続した努力が必要だ。

――話が標準伐期からだいぶ離れてしまった。ただ、時間もだいぶ押してきている。最後のテーマに移ろう。では、未来の林業をつくっていくためには何が必要か、そして、よりよい森林づくりはどのようなものだろうか?

松山

まず、森林づくりに関してだが、これは地域ごとに答えは違うだろう。木も土、風、水など様々な自然条件がある。そこから、販路が近いのか、人手に余裕があるのかなど社会的な条件の制約を受ける。それでその条件が全く同じところがあるのかというとないだろう。

――確かにそれは決してありえない。わたしは日本中の林業地を旅しているが、同じところは一つとしてない。では未来の林業をつくっていくために何が必要か?

松山

考える力だ。

林業は衰退産業でどうしようもないみたいな話を聞くことがあるが、それは違う。今の林業は穴の空いたバケツに水(資金)を投入するような形になっている。まず、穴を防ぐ努力をしなければならないだろう。たとえば、組織そのもの問題があったとしたら、体制改革を行う必要がある。うまくいった例として有名なのが日吉森林組合だろう。あそこ、給与体制や人事評価制度を一般企業並みにしたことで生産性を向上させた。家業であったとしても、外部の人間が入る以上、組織の透明性が求められる。だが、そういった透明性を確保している組織はいったいどれほどあるのか? 新興の事業体で異業種の人材がいる場合は導入しやすいと思うが、決してそうではない。どのような事業体であっても異業種などから学ぶ姿勢が求められるはずだ。

――たしかにそうだ。学んでいないと決めつけるわけではないが、情報に対してお金を払う人が少ない印象を受ける。

松山

確かに「林業新知識」や「現代林業」、「木材新聞」などの業界紙を周りで読んでいる人は少ない。こういった業界紙には、現場で取れる選択肢を増やす情報が載っており、日々参考にしている。そうやって得た情報などをこれからは自分で動きながら、考えてよりよい森林づくりに落とし込んでいくのが必要ではないか。

――確かに考える力が必要だ。ただ、その前に気づくというアクションも必要だ。さらに考えるだけでは何も変わっていない。実際に行動していかなければならない。モリコンが気づき、考え、行動する場を目指していきたい。松山さん、本日はありがとうございました。

次回以降のモリコンは、材木屋の方から見る木材業界(仮)、市町村フォレスターから見る林業(仮)などを企画しています。また、実際に行動する場として年明けの関西方面の山林の中で伐採技術の講習会を開催します。よければフォローしてチェックしてみてください。

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